09/2011

MUR

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Photos: Masao Nishikawa

単身女性が暮らす平屋の計画。高台にある敷地周辺は坂の街であり、敷地の高低差を解消しながらプライバシーを確保しながら安心して生活を送れるコートハウスが求められた。そのため、外周は道路の高さにあわせて異なる高さの壁面が連続する単純な箱形状としている。
単純なワンルーム空間に陥らないために必要なものは「物語」であると考える。門扉を開けると現れるスリット開口からはプライベートの中庭が少しだけ見える仕組みとした。細長いポーチの先には透明ガラスの玄関ドアがあり、その先にあるトップライトからは柔らかい光が室内に注ぎ落ちている。
細長い路地を敢えて迂回することでようやくメイン空間に辿りつくことができる。そこには、これまでの路地空間とは対照的な解き放たれた大空間が現れ、大型スライディングドアを開放することでメインコートと連続することができる。大きな「母屋」に対して雁行するように配置された小さな「離れ」は自身の寝室として機能し、バックヤードの庭とも連続する仕組みとした。このバックヤードはボディルームとも連続し、全ての居住空間がプライバシーを確保しながら、何らかの形で必ず外部に面するように計画されている。
異なる二つの空間と二つの庭が平面的にズレながら配置する。至ってシンプルな操作を行うことだけで、室内には複雑な空間が生み出される。外部に影響されることのないシンプルな外観に対し、自らの豊かで複雑な世界観は内部に実現される。その過程で幾度となく生み出されるサプライズこそが「物語」の本質であり、生活の中で日常と非日常の両方をいつまでも新鮮に味わい続けられる鍵であると感じている。

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