8年前に我々が設計監理をした住宅の建主が結婚し、セカンドステージの住宅を建てるため、東京スカイツリーに近い下町風情が残る小さな敷地を購入。細長い路地の奥にある狭小敷地のため、施工性を考慮して木造を選択。落ち着いた濃茶色のガルバリウム鋼板外壁が和の印象をつくり、古い街並みに違和感なく馴染んでいる。
道路側をガラス張りにすることで周辺環境を取り込んだ室内の景色が生まれ、夜には根太表しの天井やストリップ階段がライトアップされ、外観が光の塔として浮かび上がる。ファサード大開口に加え、ペントハウスに設けた高窓から差し込む光で室内は十分明るく、住宅密集エリアであることを感じさせない。
広い玄関土間の奥には客間としても使える多目的小空間を準備。縁に腰掛けることで土間と一体感を味わえる中間領域は古き良き日本の住空間を彷彿させる。2階LDKには椅子やソファの代わりに掘り炬燵式の座卓を設え、東京スカイツリーを眺めながら寛ぐという贅沢な仕掛け。御夫婦で協力しながら本格的な調理ができるコの字型のオープンキッチンも用意し、大勢のゲストをもてなすこともできる。キッチンと座卓エリアの間に段差を設けて小空間にリズムやアクセントを与え、間接照明が非日常的な印象をつくりあげる。忙しい日常を送るご夫婦にとって、肩肘を張らず自然体で振舞える「小宇宙」こそが、求めていた小住宅の姿なのである。
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