海外の建築デザイン情報サイト 〜基本情報おさらい編

海外の建築デザイン系ウェブサイトが益々元気です。「でじいんって何ですか?」と聞かれていた時代が懐かしいほど、日本の建築家やデザイナーの間でもその存在はすっかりお馴染みになりました。海外のサイトを通じて日本人デザイナーの最新プロジェクトを知ることさえ少なくありません。そのような建築家やデザイナーの作品が掲載される作品発表の場=メディアとしての機能に加え、建築家やデザイナーがスマホなどを通じて、いつでもどこでもタイムリーに世界中の情報を受け取る場所=ツールとしての役割をも担っています。またその数は増え続け日々進化しています。

ユーザー側である私たちはいま、情報源としても、掲載の対象としても、それら多種多様な海外の建築デザインサイトの中から本当に必要なものを見極め、目的に合わせて使い分けていくというスキルが求められているのではないでしょうか。あらためて、日本の建築家やデザイナーの間でも特に人気の高いサイトについて基本情報をおさらいすると同時に最近の動向などにも触れてみたいと思います。

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designboom

 

designboomは1999年に開設された、最も長い歴史を持つ建築・デザイン・カルチャーのウェブマガジンです。月間アクセス数350万、Facebookフォロワー数110万、Twitterフォロワー数39万、Instagramフォロワー数50万。イタリアのウェブメディア、というイメージが強いかもしれませんが、2004年には北京、2015年にニューヨークとオフィスを開設しており、現在は特定の国のメディアではなく「グローバル」と位置づけられています。掲載コンテンツもインダストリアル、グラフィック、アートなど幅広いのが特徴です。世界各地で開催される展示会等でデザイナーが直接販売するポップアップショップDesignmartを開設したり、LEXUS DESIGN AWARDをはじめとする様々な国際デザインアワードに関わるなど、若いデザイナーの活動を支援しています。正統派のメディアと言えるでしょう。

 

Dezeen

Dezeenは世界で最も影響力のあるイギリス発の建築デザイン系ウェブマガジンで、2006年に開設されました。月間アクセス数170万、Facebookフォロワー数55万、 Twitterフォロワー数34万、Instagramフォロワー数56万。Pinterestの活用も顕著でフォロワー数60万を獲得しています。2015年はDezeenにとって飛躍の年で、ニューヨーク支店開設に伴ってアメリカでのトラフィックを10%アップし、PinterestやInstagramにおいてはフォロワー数を大幅に増やしました。そしてウェブ界のアカデミー賞と言われるThe Webby Awardsを含め7つの賞を受賞するなど、ウェブメディアとしてもレベルアップを図っています。訪問者の75%が欧米からという数字をみても、Dezeenのノリはまさに欧米。コンテンツも際どいものや論争を呼ぶようなものまで、境目なく情報発信する恐い物知らずといった印象です。読者が意見を述べることができるコメント欄もいつも活気がありますね。

 

ArchDaily

ArchDailyはチリ発、世界で一番訪問者数の多い建築サイトです。月間アクセス数1000万、Facebookフォロワー数190万、Twitterフォロワー数41万、Instagramフォロワー数84万。 2009年時点では月間訪問者数110万ほどであったサイトの成長は目覚ましく、現在はブラジル、メキシコ、コロンビア、ペルー、中国と、中南米を中心に続々とローカル版を増やし、その地域ならではの情報発信にも力を入れています。建築に特化しているため地味なサイトではありますが、すっきりと見やすく“建築を見るならここ”という固定ファンも多いようです。

 

Architizer

アメリカの建築コミュニティーサイトArchitizerは、建築家による建築家のためのサイトであることを強みに、ほぼ世界中を網羅しているといって過言ではない4万以上の建築家が登録しています。投資先としても注目されており(SHoP ArchitectsとHandel Architectsも投資に参加)、今年初めに、建築家のためのオンラインプロダクトマーケットプレイスの開発に700万ドルの投資を受けたというニュースが業界内で話題になりました。建築家がもっと気軽に(Google検索やカタログなどから情報を得る以外の方法で)建材、設備などに関する情報をリサーチすることがすることができるツールとして、AirbnbやUberほどに破壊的なものになるといいます。当面はアメリカのHouzzや、2015年に開設されたKontorなどが競合サイトということになるでしょうか。また、日本の市場を取り込もうとするような動きがあるのか、今後の動向が気になるところです。

 

world-architects

これら建築デザイン情報サイトが「動」であるとするならば、良い意味で「静」であるのが、スイスのworld-architectsです。日本版であるjapan-architectsを含む17ヶ国版を開設し、50カ国以上2500を超える建築家やインテリアデザイナー等が掲載されています。他のサイトと大きく異なるのは、掲載されるためには年間登録料がかかる点です。また、世界共通の審査基準による審査があるため、誰もが自分のページ(”オフィスプロフィール”と呼ばれる)を持つことが出来るわけではありません。これらがフィルターとなり、いつもクオリティーの高い建築物や厳選されたデザイン事務所に出会える場所として定評があります。今年はミース・ファン・デル・ローエ財団等と共に若い才能を支援する新しいアワードYTAAを創設しました。

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どれだけ「動」の情報サイトに掲載されたとしても、日々更新されるあたらしい情報に埋もれ、自分の名前や作品をそこから見つけることは至難の業となります。しかし「静」のサイトだけでは、飛躍させるためのヒントを得るためには欠かせない多角的なものの見方を育てることはできないでしょう。日本の建築家やデザイナーの皆さんには、海外の情報サイトの勢いに押し流されることなく、取捨選択しながら活用していってほしいと思います!

(アクセス数ほか数字=2016年4月時点のものです)