3/2012

ROUGE

<< Back to Main Page

Photos: Koichi Torimura

出版社を経営する建て主は、好みの本などに囲まれた生活を求め、都心部の山の手に位置する古くからの住宅密集地の一角を購入した。今回は限られたコストで高いパフォーマンスを上げることがテーマであったため、構造体である木を意匠的にも取り込み、床壁天井や収納を一式で考える、さながら造付家具のような家を目指した。
北側一面には構造壁を利用した収納を1階から3階まで大胆に設え、納められる蔵書自体がインテリアとなるよう意図している。壁面や家具に使用したのは化粧用のラワン材。繊細な表情を見せつつ、自然な色むらが木造打ち放しの印象を強調している。意図的にランダムに設けた開口部やトップライトからは、象徴的な光が室内に差し込み、薄暗い室内に絶妙な陰影やコントラストを生みだしている。美しい光には、然るべき影の存在は欠かすことはできない。
1階の個室に対し2階には大きな吹き抜けを設け、3階空間とひとつながりの大空間となっている。床壁天井が似た印象の木材仕上げで連続するため、包まれた空間には洞窟のような居心地の良さが宿っている。敷地近くにある東京大学の赤門をモチーフに赤く彩られた外観も、緑溢れる周辺環境と違和感なく調和している。新築でありながらも、以前からその場所にあったような感覚が空間に表れているのは、制約のあるコストや都市の法的制限、建て主の謙虚さが生み出した合理的なバランス解のおかげである。

<< Back to Main Page


テキストや写真の無断転載は固くお断りいたします
Copyright (C) 2012 Neoplus Sixten Inc. All Right Reserved.