名前を付けること

建築家・デザイナーの皆さんが行うことのひとつに「名前を付けること」が挙げられます。例えば企画したプロジェクトに名前を付ける、設計した住宅に作品名を付ける、個展に際して展覧会名を付ける等々。

その行為はクライアントが行う場合もありますが、往々にして建築家・デザイナーの皆さん自らが名付け親であり、そこにキラリと光った個性が現れてくるように思います。我々のところには、日々「取材に来て欲しい」「発信して下さい」と様々なリリースや資料が送られてきますが、そこで目にする名前は多種多様ではあるものの、大きく3つに分けることができます。

1. 造語、数字やアルファベットを羅列したミステリアスなもの
2. 日本語特有の表現の豊かさを活かした詩的なもの
3. 地名やコンテクストなどに沿ってそのまま素直に出したもの

私はそれらの名前の由来についてお話を伺うのが好きです(ダメ元で当てに行くのもまたスリル満点です!)。プロジェクトの背景、響き、ビジュアル(文字の組合せ)、そこから受け取って欲しいメッセージなど、その時そのタイミングで重要視された事柄の微妙な配分を知ることができたり、そこにこそ作品の本質や様々なストーリーが隠されていることがあるからです。

名前を考える時、皆いちど立ち止まって、自分のクリエイションを様々な角度から見つめてみる作業をしているのではないでしょうか?よく「作品は子供のようなものです」とその愛着を表現してくださいますが、やはりどんな作品も名前を持って初めて本当の意味で世に出ることが出来るのだと思います。ある種の責任感と心地よい緊張感を纏い、「1人歩きしてもいいよ」とポンっと背中を押してあげる儀式のようにも思えます。私も親になって自分の子供に名前を付けた時、皆さんが日常的に行っているこの”名付けの儀式”の一端をうかがったような気がしました。

ネーミングにどれが良くてダメというのはありません。ただ、英語にした時どうなるのか、ぜひ日本語版と英語版をセットで考えてみてほしいと思います。沢山の可能性が広がっている世界に、子(デザイン)が羽ばたく姿を想像してあげる事は、もはやとても自然なことなのかもしれません。