明日からできる海外メディアPR&コミュニケーション 〜ルール編

活発な海外の建築デザイン系Webサイトの増加に伴い、日本からも自ら連絡を取り掲載を打診をすることが容易にできるようになりました。独立して間もなかったり、専任の広報が辞めてしまったりと、建築デザイン事務所には様々なフェーズがあるわけですが、海外へ向けた発信は、どのような時もやらないよりは、とにかく自己流でやってみる方がいいと考えます。
広い世界での受けとめられ方を知ることは、より客観的な視点を持って次のデザインを飛躍させることにつながるからです。

そんな発信の際に意識してみてもらいたいのは、海外メディアとのコミュニケーションにおける”暗黙のルール”。掲載率が高まる秘訣でもありますので、ぜひ実践してみてください。

その1. 資料は完璧に
海外メディアにいちど送付した資料は、基本「差し替えができないもの」という意識を持とう。特にテキスト資料はスペルミスなど間違いが起きやすいので、ダブルチェックを欠かさず万全の状態で臨みたい。忙しい編集者の手を煩わすことは、今後大いにそのメディアとの関係を悪化させる要因となりえる。もちろん英語はネイティブチェックをしてから。どの国の編集者が読んでもわかりやすい文章にしておくことはPRの基本。

その2. メールは件名で勝負する
ArchDailyなどのトップウェブマガジンは、1日に100〜200通の掲載依頼メールを受け取っている。件名が相応しくないだけで折角送ったメールに気づいてもらえないのでは、まだ海外PRのスタート地点にも立てていないのと同じ。件名を付ける際に「Kitasenzoku House」など日本人にしか分からない地名などは極力避け、「Submission」や「Architecture」など、より目的や内容を示唆するキーワードを入れることで、迷惑メールフォルダに振り分けらることを回避しよう。海外メディアの間ではZipファイル=悪。Zipだけで送った資料は永遠に開いてもらえることはない。

その3. 掲載を優先したいメディアを明確にする
トップメディアともなると、自分たちが一番に掲載をするという条件付きでのみ掲載するケースも少なくない。他のメディアに先に掲載されてしまったがゆえに、本命のメディアに掲載されなくなってしまうなどの悲劇がおきないよう気をつけたい。そのためには、5つほどのお気に入りのメディアをリストアップし、順番にアプローチするようにしてみよう。海外メディアは、基本的に「送られてきたものは掲載しても良いもの」と捉えるため、「ちょっと待った」はルール違反と心得よ。

その4. 催促メールは1回まで
編集者から掲載依頼がきて喜んだのもつかの間、待てど暮らせどその後連絡がないというシチュエーションは誰もが一度や二度は経験する。海外メディアとのコミュニケーションでは、作品データを送付したあと急に連絡が取れなくなることや、なにも連絡がないうちにいつの間にか掲載されていることがよくある。しかし心配な気持ちから何度も確認のメールをすることはプラスにならない。一度国際電話をかけるか、仙人のような穏やかな気持ちでひたすら「待つ」。ここが、掲載をものにするのか否かの分かれ道となりうる。

その5. 世界の批評を受け止める覚悟を持つ
たとえ厳選したWebメディアに掲載してもらったつもりでも、その記事は翌日から世界中のWebサイトに確実に転載され拡散されていく。そして様々な言語に訳され、作品は知らぬ間に褒めたりけなされたりの道を辿る。「掲載されたのは紙媒体だから」と安心するなかれ。今や紙媒体もウェブ版、SNSなどと連動した情報発信スタイルが主流。海外のWebメディア掲載は、基本的に自分のコントール範囲外と考えておくことが望ましい。どのような掲載やコメントで溢れても受け入れるだけの余裕や心意気がなければ、最初から海外PRはやめておいた方がいい。

その6. 掲載誌は自分で購入する
掲載されたら出版社から雑誌が届くという方程式が通用したのは今は昔。どこも経費削減として称して掲載誌を送りたがらない。掲載誌をどうしても無料で送って欲しいのであれば、その条件にあらかじめ同意したメディアのみを対応するくらいの意思が必要となるが、掲載のチャンスを自ら逃してまで固執すべきかことなのかどうかを見極めたい。掲載誌を編集部から直接購入する行為は、わかりやすい歓びの気持ちや感謝の意を伝える行為。それはのちに、その出版社と良い関係を築く布石となる。